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老いて病む人の見る掌をわれもみるてのひら見るはわれを見ること
岩田 正
おほいなる奇異の鎌もておのづから涙ぬぐはむ夜は明けにけり
坂井 修一
フランス語を学ぶ桃子よふらんすはあまりに遠しと嘆く詩知るや
高尾 文子
それぞれの薬二列に張りつけし鏡に向かい顔洗う父母
久山倫代
母の肝臓子の血管に?がれてハイビスカスのごとく赤らむ
外 須美夫
抱きあいていると覗けば共食いのあとが散らばるバケツの浅蜊
井上久美子
砂糖入れぬ紅茶すがしも来し方の我を過ぎにし人おもふなり
野中廣子
元素へと還りゆきたる人を呼ぶどこにもいるようでどこにもいない
下村道子
パラソルは男にはなきさりながら雲を生みたい風を生みたい
鈴木 良明
六十歳代は漫画のようで「さげ」なくていいさしのまま次週に「つづく」
小高 賢
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